2016年6月15日水曜日

3SK294試食

初めて扱うデバイスをテストした記事にはよくこのタイトルのような表現しますよね(笑)

というわけで、唐突ですが3SK294というデュアルゲートMOSFETの広帯域RF1段アンプを試作してみました。

というのも今回製作中の7MHz帯のQRPトランシーバの受信部に使用している2SK241は、過去色々な製作記事で採用されきた、アマチュア自作派界隈では非常にポピュラーな石でしたが、廃品種となって久しくだんだんと入手も困難になってきました。一時期秋月でも販売していましたがすでに在庫が尽き、ここ最近ではめっきり姿を消してしまって互換品も滅多に見当たりません(先日某aitendoで見かけましたが1本120円とちょっとお高いですHi)。自宅の部品箱に眠っている2SK241(GRクラスとYクラス)を数えてみましたが、20本余りしか残っていませんでした。

そうかと思えば他にも良く使われていた小信号アンプ用の石(3SK59とか73とか)を探してみても、ほとんどが市場から姿を消してしまって、偶々見つかったものもみな高価(昔の値段から見て)でなかなか手を出そうという気が起きません。

まぁこのご時勢メインの需要がことごとくなくなっているので仕方のないことですが、おこぼれを頂戴する自作民としては代わりに使えそうなものを見つけていくしかないわけです。ぼちぼちネットで探していたところこれまた秋月でこのデバイスを見つけたので、早速ためしにいくつか購入してみました。

10個入りで230円と安価ですが、表面実装型でしかも非常に小さい!

実験基板 ちょうどユニバーサル基板のランドに足が重なるので何とか実装できました
Si5351Aといい勝負くらいな非常に小さいパッケージで、ピン配列も照明をかなり近づけてみないと判別がつきません(というか自分がROGANであるがゆえなわけですが(笑)。

パッケージの小ささに加えてデータシートの最大定格を見ると、VDSが12.5V、PDが100mWといままでの高周波用FETよりふた回りほど小さい規格になっており、設計には最大定格を超えないように充分注意しなければなりません。

それでも500MHzでの電力利得が26dB、NF1.4dBときわめて優秀で、しかも帰還容量が非常に小さい(20fF・・・「フェムト」って読むんです。ご存知でしたか?"p"「ピコ」より10^-3小さい単位です。帰還容量が非常に小さいといわれていた2SK241でも0.035pF=35fFで、3SK294はそれよりも小さい!)というのがこのデバイスの特徴です。

 さらに調べてみると、八重洲のFTDXシリーズの1stミクサをはじめ各メーカーのリグにも多く採用されているみたいです(ミクサ、IFアンプ、高周波スイッチ等々)。

多くの機器(といってもアマチュア機ですが)で採用されているので当分は供給には困らないだろうと踏み、よしこのMOSFETで高周波アンプを試作してみようぜっ!というわけです。

試作した回路図 ソース抵抗挿入による検討はまだ行っていません
 なにせ動作条件の範囲が小さいので、最大定格を超えないように各定数を考えなければいけません。
 データシートでは、VDS 6V、ID 10mAで順方向アドミタンスと電力利得のデータが記されており、ID 10mAを軸にして各定数を決めました。ID-VDS曲線ではVG1Sを1.5Vに固定することでVDSが3Vから10Vの間でVG2Sの変化に関わらずほぼIDが10mA以内に収まり、PDもVDSが6Vであれば最大PD以内に収まります。VG2Sは0Vから4.5Vに変化するに従い順方向アドミタンスは0mSから22mSまで上昇するため、VG2Sは最大4.5Vとして半固定抵抗で連続的に変化できるようにしました。電源(VDS)は78L05で5Vに落として3SK294に供給しています。

まとめると、

VDS:5V
VG1S:1.5V
VG2S:0~4.5V
ID:10mA
PD:50mW
(参考:出力インピーダンス:400Ω,入力インピーダンス(ノイズマッチング)2kΩくらい?)

この条件でバイアス抵抗を決め、ユニバーサル基板に実装して早速測定してみました。

おなじみおじさん工房APB-3のネットワークアナライザを使い、VG2Sを変化させながら10MHzまでの利得カーブを測定しました。

アンプをバイパスして測定した結果を0dB基準としています
半固定抵抗でVG2Sを変化させながら連続スイープさせ結果を重ねた図です。2~3MHzのピークは負荷RFCの自己共振が関わっているのではないかと考えらます。この構成では10MHzまでは1段で最大40dB弱~50dB弱の利得が得られています。出力に共振回路を追加するともっと利得が上がる可能性はありますね。

最も下のカーブはVG2Sが0.66V、最も上のカーブは4.5V時のものです。
4MHzでの最大利得は38.4dBと非共振としても充分な利得があります。

そこで、4MHzでのVG2Sと利得の関係をプロットしたものがこちら。
0.9Vから2.2VあたりのVG2Sの変化で25dB程度の利得変化が得られています
AGC電圧をVG2Sに加えるとすれば、0.9Vから2.2Vの範囲が良さそうです。さらにソース抵抗を挿入することでもう少しリニアリティが改善されるかもしれないので、追加測定を考えています。

心配された異常発振の兆候もなくパッケージが非常に小さい点を除けば、高周波アンプとしても結構使えそうですね。

7MHzトランシーバの受信部にプラグインできるように実装したので、2SK241 2段のモジュールと交換してみました。

IFアンプモジュールを2SK241 2段から3SK294 1段へ交換
3SK294試作アンプにはAGCはかかっていませんが、VG2Sを下げて少し利得を絞っても2SK241の2段アンプと体感的には遜色はありません。これなら高1中2構成でも十分かもしれませんね。

さてこのFETはエンハンスメント型でありゲート電圧がプラスの領域でドレイン電流が流れて動作するため、用意するAGC電圧は常に正で良いと思われます・・・ということは・・・?

ちょっと面白いことを思いついたのですが、うまくいきそうになったら公開してみようかな、と(もったいぶりMAX

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