2017年2月27日月曜日

ポケットQRP CWトランシーバ160m版終段テスト

VN-4002の派生版としてまず160m版の終段を改めてテストしました。


ブレッドボード上にドライブ用の74HC00とファイナルのFET、E級ネットワークを構成するコンデンサ2つと共振コイル、RFCと1:4のインピーダンス変換トランスを配置します。

通常ファイナルはBS170の2パラを使いますが、160mと周波数の低い領域ではもう少し大型の電源用MOSFETが使えそうなので2つばかり秋月の販売リストから選んでみました。

上の写真左下にデバイスが見えますが、左から2SK2796L、2SK4033、おなじみのBS170です。

2SK2796Lの主なデータはVDSS 60V, ID 5A, RDS(ON) 0.16Ω, Ciss 180pF, Coss 90pF, td(ON)  9ns, tr 25ns, td(OFF) 35ns, tf 55nsといったところです。

Cissがかなり低く5V駆動が可能で高周波でも扱いやすそうで以前7MHzでテストしましたが、trが大きく7MHzという周波数に追従できず適用を外しました.しかし160m、1.9MHzでは使えそうだったので候補に上げました。

もうひとつは2SK4033で非常に安価な石です。主なデータは、VDSS 60V, ID 5A, RDS(ON) 0.09Ω, Ciss 730pF, Coss 95pF, td(ON)  10ns, tr 20ns, td(OFF) 4ns, tf 35ns

こちらも5V駆動が可能ですがCissが結構高いです。ON抵抗やtfは2SK2796Lよりも低いです。Cissが高いデバイスをロジック3パラでどこまで駆動できるか興味のあるところです。(駆動インピーダンスをより下げる必要があるのかどうか含めて)

1.9MHzで計算したE級ネットワークを構成するパラメータにあわせた素子を組み込み、この2つのMOSFETでゲート電圧とドレイン電圧をオシロスコープで観察しました。
1.9MHzで観察 ゲート電圧の立ち上がりと立下りがCissの影響をうけています
1.8MHzで観察 共振周波数がずれてFETオンでリンギングがみられます
それでも出力波形は正弦波に近くなっています
FETのCissが180pFであっても駆動インピーダンスがそれほど低くないためか、電圧波形に影響を及ぼしています。ただ、この駆動法でも十分だと思われました。

で、次に2SK4033に差し替えて観察してみました。

1.9MHz ゲート電圧は高いCissに影響をうけていますが駆動できています
1.8MHz 2SK2796Lと同様でした
最終的な出力波形も特に問題なさそうです
2SK2796L, 2SK4033ともに160mでのファイナルに使えそうです。Cissが700pF程度でもこの周波数帯であればロジックパラ接続で駆動が出来ることがわかりました。

本来であれば1.8MHzにもあわせるべきですが、効率は80%前後のためスプリアスにも大きな変化が見られないためこの条件でも良いかもしれません。

今回はより扱いやすそうな2SK2796Lで進めようと思います。

2200mにも適用できますが、20W程度の出力を想定しているので、ピークのドレイン電圧が高くなりデバイスの耐圧VDSS 60Vを超えてしまうことから、100V以上の耐圧を持つ素子を改めて探すこととします。(プッシュプルという手もあるのかな?)

おわり

2017年2月24日金曜日

Si5351A周波数設定関数の改良

ポケットサイズ7MHzQRP CWトランシーバ VN-4002のベータ版(人柱版)は7名の方が現在製作中です。小さいサイズなのでやはりいろいろと難しいらしく悪戦苦闘しておられます。改良要する点などいくつか出てきており大変助かります。

JF1DIRさんがVN-4002人柱版の組み立て過程をライブ配信と動画で公開されています。ご興味ある方はぜひご覧になってください。JF1DIRさんのYouTubeチャンネルはこちらです。

部品装着が問題なければ再現性は高いと思うので、皆さんがんばって完成させてください。

ところでこのトランシーバですが、派生版の構想があります。他のバンド(30m, 20m,17mや6mに160m,2200mも)版やSSB版など、いろいろと拡がりそうでとても面白いと思っています。30mから17mあたりは受信フロントエンドの同調回路とLPF、フライホイール定数の変更で対応できそうですが、6mや2200mは発振周波数の拡張が必要であることと、160m,2200mはコイルのインダクタンスが高いため小型化が難しく別途基板を起こす必要がありそうです。

まずは広いバンドに対応させるべくSi5351Aの設定周波数を拡げるためにプログラムの改良を行いました。

おさらいとして過去のブログ記事から改良前の周波数設定アルゴリズムを。

I.Si5351Aの周波数設定式

1.VCO周波数設定(PLLA, PLLB)

 fvco = fXTAL x (a + b / c)
    a...15~90, b...0~1048575, c...1~1048575, fXTAL = 25MHz or 27MHz

 fvco = 375MHz~900MHz

2.VCO分周設定(MultiSynth0,1,2,...)

 fout = fvco / (d + e / f)
    d...4~900, e...0~1048575, f...1~1048575

II.出力周波数と各パラメータの関係表 


a(16~32(36))cd
16~36MHzF100000025
8~16MHz2F50000050
4~8MHz4F250000100
2~4MHz8F125000200
1~2MHz16F62500400
(FはMHzオーダーの値)

この関係表の周波数を上と下方向に拡張すればよいのですが、各パラメータの制限にかかるのでひと工夫が必要になります。

 まず上方向から。

36MHz以上の場合、パラメータaは0.5F, cは2000000, dが12.5となりますが、cは最大値を超えるのとdが整数でなくなるためそのまま適用できません。(eとfを使えば12.5分周可能ですが、fractional分周になるため出力信号にジッタが増える恐れが出てきます)

最小10Hzステップになることに目を瞑れば、dの整数が保てる範囲内でdを10分の1にすることで160(180)MHzまで出力周波数を伸ばすことが可能になります。

今度は下方向。

0.5MHzから1MHzの場合、aが32F, cが31250, dは800となりますが、1MHz以下のためa値が条件を満たさなくなってしまいます。

そこで、もうひとつ出力直前に設けてある後分周設定を適用します。
Rxにおいて信号が全体的に分周されるので、プログラムでは入力された周波数値を分周分だけ最初に乗算してから計算するようにすればOKです。

最終的に改良後の出力周波数と各パラメータ関係表は次のとおりになります。


a(16~32(36)) c d R
80~180MHz 2F 500000 5 0
40~80MHz 4F 250000 10 0
36~40MHz 8F 125000 20 0
16~36MHz F 1000000 25 0
8~16MHz 2F 500000 50 0
4~8MHz 4F 250000 100 0
2~4MHz 8F 125000 200 0
1~2MHz 16F 62500 400 0
0.5~1MHz 16F 62500 400 2
0.25~0.5MHz 16F 62500 400 4
0.125~0.25MHz 16F 62500 400 8
62.5~125kHz 16F 62500 400 16
31.25~62.5kHz 16F 62500 400 32
15.625~31.25kHz 16F 62500 400 64
8~15.625kHz 16F 62500 400 128

色付き部分の関係を満たすようにプログラム追加修正分を書き込んでテストしました。

まずは136kHz帯。 


オシロスコープ画面の左下の周波数表示を確認してください。このくらいの低い周波数では矩形波がピシッとしていて綺麗ですね。

つぎにプログラムを入れ替え50MHz帯を。


測定しているオシロスコープの帯域は100MHzなので、矩形波は波形がなまって表示されています。しかし設定した周波数で出力されています。

というわけで、派生版への第一歩がひとまず完了です。